東京高等裁判所 昭和26年(う)91号 判決
元来本件は一人の被告人に対する併合罪の事件であるから、刑法総則の規定が適用されゝば、主文における主刑たる罰金刑は一個となるべきものであり、従つてその附加刑である沒収についても一括して言渡すべきものである。ところが酒税法第六十条第一項、第六十二条第一項の罪を犯したものについては同法第六十六条により罰金刑を科する場合には刑法第四十八条第二項の規定が排除されるので主刑である罰金刑については各事実毎に言渡すべきものとなるのであるが、沒収については酒税法に特別の規定がないから主文においてこれを一括して言渡しても何等差支のないものである。又いずれの物件か、いずれの犯罪に関連するものであるか、亦これを認めた証拠は必ずしもこれを示す必要はないのである。
更に又沒収の目的物が判決の罪となるべき事実の摘示中に現われていなければ、沒収することはできないというものではない。判決の事実理由に現われていなくても実際犯罪にかゝるものであれば沒収できるのである。而して本件記録によれば、原判決挙示の証拠によつて原判決に掲げた物件中麹蓋十八個と麹四斗の換価代金八百円は判示第二の犯罪事実に、その余の物件は判示第一の犯罪事実に夫々かゝるものであることが認められるので原判決は沒収について所論のように証拠にもとずかずして判決したことが審理不尽法律の適用を誤つたという違法は存しない。
論旨はすべて理由がない。